「3社から見積もりをもらったのに、かえって分からなくなりました」。ご相談でいちばん多い言葉かもしれません。
60万円、95万円、140万円。並べてみたものの、書いてある項目がバラバラで、何がどう違うのか読み取れない。安いところに頼んでいいのか、高いところには何か理由があるのか。判断材料がないまま、金額だけで決めそうになる——その状態は危ないです。
この記事では、制作会社から届いた見積書をどの順番で、どこから読むかを、現役のWeb制作者の目線でお伝えします。会社そのものの選び方は失敗しないホームページ制作会社の選び方にまとめているので、ここでは紙に書かれた項目そのものの読み解きに絞ります。
金額より先に、前提条件の欄を見てください
見積書を開いて、最初に合計金額へ目が行くのは自然なことです。ただ、金額は前提条件の結果でしかありません。ここを飛ばすと、比べようのないものを比べることになります。
同じ100万円でも、中身はまるで違います
たとえばA社の100万円が「10ページ・原稿はお客様支給・写真は素材集」で、B社の100万円が「6ページ・原稿はこちらで作成・撮影1日つき」だったとします。ページ数だけ見ればA社が得ですが、原稿を自分で全部書けるかどうかで話はまるで変わります。
制作の現場で言うと、原稿づくりは想像の3倍は時間がかかります。「文章はこちらで用意します」と言っていた社長さんが、2か月止まってしまうケースを何度も見てきました。前提条件は、そのくらい重い情報です。
最初に確認する3つ
見積書の上部、または備考欄に書かれていることが多い項目です。書いていなければ、それ自体が確認事項になります。
この3つが同じ条件になっていない見積書は、金額を横に並べても意味がありません。まずはそろえるところから始めてください。
費目の意味が分かれば、見積書の8割は読めます
専門用語が並んで見えますが、費目の数はそれほど多くありません。何の作業に対する費用なのか、そしてその費目が無いと後で何が起きるのかをまとめました。
| 費目 | 何に対する費用か | 無いとどうなるか |
|---|---|---|
| ディレクション費 | 打ち合わせ、構成づくり、進行管理 | 誰も全体を見ていない状態になり、抜けが出やすい |
| デザイン費 | 見た目の設計。トップと下層で分けて書かれる | 既製テンプレートに当てはめる形になる |
| コーディング費 (実装費) |
デザインをブラウザで見られる形にする作業 | デザイン費と一体で計上されている場合もある |
| CMS構築費 | 自分で更新できる仕組みを入れる作業 | お知らせ1本の更新も依頼が必要になる |
| 原稿・撮影費 | 文章の作成、写真の撮影 | 自分で全部そろえることになる |
| サーバー・ドメイン | 設置場所と住所の取得・設定 | 自分で契約する形になる(それ自体は問題ない) |
| 保守・管理費 | 公開後の更新対応、バックアップ、不具合対応 | 公開後は都度見積もりになる |
ここで大事なのは、「無い=手抜き」ではないということです。原稿を自分で書けるなら原稿費は要りませんし、サーバーを自社で契約したい会社もあります。問題なのは、無いことに気づかないまま契約することです。
それぞれの費目がいくらぐらいになるか、相場の全体像はホームページ制作の費用相場【全国・中小企業向け完全ガイド】にまとめています。公開後の保守が毎月いくらかかるかは維持費・保守費用の相場をどうぞ。
「一式」表記は悪ではない。ただし1つだけ聞いてください
「ホームページ制作一式 800,000円」。この1行だけの見積書を見ると、不安になりますよね。ただ、一式表記そのものが悪いわけではありません。小規模な案件では、細かく割るほうが実態と合わないこともあります。
問題は、一式の中身が共有されていないことです。含まれると思っていたものが含まれていなかった、という食い違いは、たいていここから生まれます。
💡 この一言で解決します
「この一式に含まれないものを教えてください」と聞いてください。含まれるものを聞くより、含まれないものを聞くほうが、答えが具体的に返ってきます。まともな制作会社なら、その場で追加項目を挙げてくれます。答えを濁されたら、そこが判断材料になります。
口頭で聞いた内容は、メールで一度なぞっておいてください。「先日うかがった、含まれない項目はこの3つという理解で合っていますか」と送るだけで十分です。争いを想定するというより、お互いの記憶違いを防ぐためです。
見積書に「書いていない」ものが、あとで追加になります
追加請求そのものは、悪いことではありません。頼んでいない作業が発生すれば費用は増えます。ただ、最初から予想できた追加で揉めるのは、もったいない話です。よく見落とされる項目を挙げます。
とくに4つ目の引っ越しは、リニューアルのときに抜けがちです。古いページのURLを新しいページへ転送する作業が入っていないと、これまで検索から来ていた人が行き止まりに突き当たります。既存サイトがある場合は、この1行があるかを見てください。
※お手元の見積書を見ながらでも構いません。読み方の相談だけでも無料でお受けしています。
相見積もりは、条件をそろえないと比べられません
3社に声をかけたのに比較できなくなる原因は、各社に伝えた内容が違うことです。同じ話をしたつもりでも、聞かれた順番や聞かれた項目が違えば、返ってくる見積書も変わります。この手順でそろえてください。
同じ紙を 全社に渡す
A4一枚の要望メモで十分
ページ数を 仮でも決める
「5〜6ページ想定」でよい
原稿と写真の 担当を明記
最大の金額差はここ
保守の有無も そろえて聞く
月額込みか別かで総額が動く
3年分の総額で 並べる
制作費+月額×36か月
5番目が肝心です。制作費が安くても月額が高ければ、数年で逆転します。制作費+月額×36か月で並べ直すと、順位が入れ替わることが珍しくありません。月額に何が含まれるかは会社ごとに違うので、そこもあわせて聞いてください。
なお、相見積もりを取ること自体は、後ろめたい行為ではありません。最初から「他社さんにも聞いています」と伝えて構いません。伝えたほうが、各社とも条件を明確に書いてくれます。
金額以外に見ておきたい4つの条件
見積書の下のほうや、備考欄に小さく書かれている部分です。ここを読んでおくと、進行中のすれ違いが減ります。
1支払いのタイミング
着手時に半分、公開時に残り半分という分け方が多いです。全額前払いを求められた場合は、その理由を聞いてください。少額の案件では一括もありますが、金額が大きいのに前払いという条件は、確認する価値があります。
2検収と、修正の範囲
「公開後◯日以内に申し出のない場合は検収完了」といった一文です。デザインの好みの変更と、指示どおりでない部分の直しは扱いが違います。後者は修正回数に数えないのが一般的なので、そこも確認しておくと安心です。
3データと権利の扱い
ドメインの名義、サーバーの管理権限、制作データの引き渡し。将来ほかの会社へ移る可能性を考えると、名義は自社にしておくのが基本です。契約まわりの注意点はホームページのリース契約に注意でも扱っています。
4有効期限と、税・登録番号
見積書には有効期限(1か月が多い)があります。あわせて、金額が税込か税別か、インボイス制度(適格請求書)の登録番号が記載されているかも見ておいてください。仕入税額控除を受ける場合に関わります。登録の有無は国税庁の公表サイトで確認できます。
受け取ったあと、この3つを聞けば十分です
ここまで読んでも、専門的な判断まではできないと感じるかもしれません。それで構いません。次の3つを聞くだけで、見積書の解像度は大きく上がります。
- 「この見積もりに含まれないものはどれですか」:追加費用の芽を先に潰せます
- 「公開後に自分で直せるのはどこまでですか」:CMSの範囲がはっきりします
- 「この金額が上がるとしたら、どんなときですか」:変動する条件が見えます
この3つに、順序立てて答えられる会社は信頼できます。逆に「だいたい大丈夫です」で流されるようなら、契約後も同じ調子でやり取りが進むと考えたほうがいいです。見積もりの段階は、相手の仕事の進め方を見る機会でもあります。
安さの理由をもう少し知りたい方は格安ホームページ制作はなぜ安い?を、フリーランスと制作会社の費用差については制作会社とフリーランス、どっちに頼む?をあわせてご覧ください。
お手元の見積書、読み方だけでも聞いてみませんか
「この項目は何ですか」「この金額は妥当ですか」——他社さんの見積もりでも構いません。内容をうかがって、確認したほうがいい点を無料でお伝えします。いきなり発注でなくて大丈夫です。しつこい営業もしません。
Studio Experts加盟/建築・人材などの制作実績、士業・飲食の制作サンプルあり・オンライン相談で全国対応
よくある質問
Q相見積もりは何社くらいが適当ですか?
2〜3社が現実的です。それ以上になると、打ち合わせと比較だけで時間を取られます。声をかける前に条件をそろえておけば、3社でも十分に判断できます。
Q金額の値引き交渉はしてもいいですか?
構いませんが、値引きより範囲を減らす相談のほうが健全です。「ページ数を減らす」「原稿を自分たちで書く」といった形なら、双方に無理が出ません。作業量が変わらないまま金額だけ下がると、どこかにしわ寄せがいきます。
Q見積書に有効期限が書かれていません。問題ですか?
すぐに問題になるわけではありませんが、いつまでこの金額かを確認しておいてください。数か月空くと、仕様の前提や外部サービスの料金が変わっていることがあります。
Q補助金を使う場合、見積書で気をつけることはありますか?
補助金の申請では、見積書の提出を求められるのが一般的です。対象になる経費とならない経費が分かれているため、申請の予定があることを制作会社に先に伝えてください。要件は公募回ごとに変わるので、公式サイトで最新の内容を確認してください。
参考情報
- 国税庁「インボイス制度について」(適格請求書の記載事項)
- 国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」(登録番号の確認)
- IPA「情報システム・モデル取引・契約書」(発注側・受注側の役割分担の考え方)
- IT導入補助金(公式)(対象経費・提出書類の確認)
関連記事
- 失敗しないホームページ制作会社の選び方|見積もりで見る7つのチェックポイント
- ホームページ制作の費用相場【全国・中小企業向け完全ガイド】
- ホームページの維持費・保守費用の相場|月額の内訳と抑え方
- 格安ホームページ制作はなぜ安い?後悔しないための確認ポイント
- ホームページ制作を依頼する前に準備するもの|原稿・写真・素材のチェックリスト
まとめ
見積書は、金額から読まないでください。先に見るのはページ数・原稿と写真の担当・修正回数の3つです。ここがそろっていない見積書は、そもそも横に並べて比べられません。
費目は7つ覚えれば十分です。ディレクション、デザイン、コーディング、CMS構築、原稿・撮影、サーバー・ドメイン、保守。それぞれが無いことに気づかないまま契約しないことが、追加請求を防ぐいちばんの近道です。
そして相見積もりは、制作費だけでなく3年分の総額で並べてください。制作費が安くても月額で逆転することがあります。判断に迷ったら「含まれないものはどれですか」の一言を、遠慮なく聞いてみてください。
お手元の見積書を見ながらのご相談でも構いません。どこを確認すべきかだけでも、お伝えできます。