「物件はポータルサイトに出しているし、自社のホームページはいらないのでは」。不動産会社の方から、実際にうかがう言葉です。
賃貸の反響だけを考えるなら、その判断は間違っていません。物件はポータルで探されますし、そこに出す以上のことは自社サイトではできません。
ただ、売却の査定依頼と、オーナーからの管理受託は事情がまったく違います。こちらは物件情報が存在しない段階の相談なので、探す側は「どの会社に任せるか」で選びます。そのとき見られるのが自社サイトです。この記事では、業態ごとに変わるサイトの役割・不動産広告の表示ルール・物件情報の扱い方・費用相場を、現役のWeb制作者の目線でまとめました。
賃貸・売買・管理で、サイトの役割はまったく違います
まず整理させてください。同じ不動産会社でも、力を入れる業態によって自社サイトに求められるものが変わります。ここを混ぜて考えると、作っても手応えがありません。
1賃貸仲介:来店前の「確認」に使われる
物件探しはポータルが主戦場です。自社サイトの役割は、ポータルで気になった人が会社名を検索したときの受け皿。営業時間、店舗の雰囲気、スタッフ、来店の流れが分かれば十分で、ここに凝る必要はありません。
2売買仲介(売却):ここが自社サイトの主戦場
「家を売りたい」と考えている人には、まだ物件情報が存在しません。だから会社そのものを比べて選びます。査定の流れ、費用、売却にかかる期間、担当者の顔。ここが充実しているかどうかで、査定依頼の数が変わります。予算をかける価値がいちばん高いのはこの領域です。
3賃貸管理:オーナーに向けて書く
管理受託を増やしたいなら、読み手は入居者ではなく物件のオーナーです。空室対策の考え方、管理手数料、対応範囲、報告の頻度。入居者向けのページと同じサイトに置くなら、入口をはっきり分けてください。混ざっていると、どちらにも届きません。
会社名で検索する
自社サイトで会社を判断
来店・査定依頼
青く塗った部分が、自社サイトの仕事です。物件で選ばれるのではなく、会社で選ばれる場面をどれだけ作れるか。この視点で組み立てると、載せるべきものが決まります。
【要注意】不動産広告には、守るべき表示のルールがあります
ここは他の業種にはない、不動産固有の重要事項です。制作会社に任せきりにせず、必ず社内で確認する体制を作ってください。
不動産の広告は、宅地建物取引業法の「誇大広告等の禁止」と、業界の自主ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」の両方に沿う必要があります。表示規約は公正取引委員会と消費者庁の認定を受けたルールです。
| やってはいけない/間違えやすい表示 | 正しい扱い |
|---|---|
| 成約済みの物件を残しておく | おとり広告にあたるおそれ。速やかに削除する |
| 徒歩分数を体感で書く | 道路距離80mにつき1分。端数は切り上げる |
| 築1年半の未入居物件を「新築」と書く | 「新築」は建築後1年未満かつ未入居のもの |
| 「地域No.1」「業界最安の手数料」 | 客観的な根拠を示せない順位・最上級表示は使わない |
とくに気をつけたいのが1つ目です。成約済みの物件をサイトに残したままにするのは、更新が追いついていないだけのつもりでも、おとり広告と受け取られる可能性があります。自社サイトに物件を載せるなら、消す運用まで含めて設計してください。
⚠️ 制作会社は、この分野の専門家ではありません
Web制作者は表示規約の専門家ではなく、集客を優先して強い言葉を提案してくることもあります。ですが責任を負うのは会社側です。公開前に、宅建士の資格を持つ方が原稿を確認する工程を必ず入れてください。判断に迷う表記は、所属する不動産公正取引協議会にご確認ください。ここでご紹介しているのは一般的な考え方です。
※「いまのサイトの表記が気になる」という段階でも、無料でご相談いただけます(相談だけでも大丈夫です)。
物件情報を載せるか、載せないか
設計の分かれ目になる判断です。物件を自社サイトに載せる方法は3つあり、費用も手間もまったく違います。
制作の相談を受けたとき、まずうかがうのは「誰が、いつ更新しますか」です。ここが決まらないまま物件掲載の仕組みを入れると、半年で更新が止まります。古い物件が並んだサイトは、ないほうがましです。表示規約の面でも危うくなります。
売却の査定を主に狙うなら、3つ目の「載せない」選択も十分に合理的です。予算を査定ページと会社紹介に集中できるので、結果的に反響が増えることがあります。
反響が変わるのは「担当者が見える」サイトです
物件でも価格でもなく、最後は人で決まる。これは不動産に限らない話ですが、金額が大きく、やりとりが長く続く商売ほど強く出ます。
売却の相談は、多くの方にとって一生に数回のことです。そのうえ、家の事情や相続の話まで打ち明けることになります。だからこそ「この人になら話せるか」を、会う前に確かめようとします。
載せておきたいのは、次のような内容です。
- 担当者の顔写真と、宅建士などの資格:正面からの写真を1枚。名前と資格を添えてください。
- この仕事をしている理由:数行で構いません。地元で長くやっている理由や、大事にしていることを。
- 査定から引き渡しまでの流れ:期間の目安と、途中で何が必要になるか。
- 費用の考え方:仲介手数料のほかに何がかかるか。金額そのものを出しにくくても、項目だけは書けます。
逆に、社長の写真も担当者の名前もなく、物件だけが並んでいるサイトは、査定依頼にはつながりにくいと感じています。物件を売っているのではなく、任せてもらう仕事だからです。
不動産会社のホームページ制作の費用相場
費用の目安です。物件掲載の仕組みを入れるかどうかで、金額が大きく変わります。
| 内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 会社紹介中心・物件掲載なし | 30万〜60万円 |
| 査定ページ・スタッフ紹介を作り込む | 60万〜100万円 |
| 物件を手動で掲載する仕組みを追加 | 80万〜150万円 |
| 物件管理システムと連動させる | 150万円〜(別途月額) |
売却の査定依頼を増やしたい会社なら、60万〜100万円で査定まわりを作り込むのが現実的です。物件連動は便利ですが、賃貸の反響を自社サイトで取りにいく方針が固まってから検討しても遅くありません。
料金の内訳はホームページ制作の費用相場で分解しています。依頼先の比べ方は失敗しない制作会社の選び方、発注前に用意するものは依頼する前に準備するものをご覧ください。公開後の月額は維持費・保守費用の相場にまとめています。
物件を載せるかどうかから、ご相談ください
「賃貸と売買、どちらに寄せるべきか」「物件連動は必要か」——設計の入口で迷う部分です。いまの業務の比率と、増やしたい相談の種類をうかがったうえで、無料で整理してお伝えします。いきなり発注ではありませんし、しつこい営業もしません。
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よくある質問
Qポータルサイトに出していれば、自社サイトは不要ですか?
賃貸の反響だけならその考え方も成り立ちます。ただし売却の査定依頼や、オーナーからの管理受託は、物件情報がない段階の相談です。会社を比べて選ばれるため、自社サイトがないと候補に入りにくくなります。
Q物件写真は自分たちで撮ったもので大丈夫ですか?
問題ありません。明るい時間に、広角で室内全体が入るように撮れば十分に使えます。ただし実際より広く見せる加工は避けてください。現地で「思っていたのと違う」となると、その後の話が難しくなります。
Q成約した物件は、すぐ消さないといけませんか?
速やかに削除するのが原則です。残したままだと、おとり広告と受け取られるおそれがあります。実績として見せたい場合は「成約済み」と明記したうえで、募集中の物件と明確に区別してください。運用ルールを先に決めておくと安全です。
Q公開までどれくらいかかりますか?
会社紹介と査定ページ中心なら2〜3か月が目安です。物件掲載の仕組みを入れる場合は、システムの選定と設定が加わるため3〜4か月ほど見てください。原稿の法的チェックの時間も、あらかじめ工程に入れておくと安心です。
参考情報
- 不動産公正取引協議会連合会(公式)(表示規約の確認)
- 国土交通省 建設産業・不動産業(宅地建物取引業法関連)(法令・制度の確認)
- 消費者庁「景品表示法」(順位・最上級表示の考え方)
- IT導入補助金(公式)(制度・公募の確認)
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まとめ
不動産会社のホームページ制作費は、会社紹介中心で30万〜60万円、査定ページやスタッフ紹介を作り込んで60万〜100万円、物件掲載の仕組みを入れると80万円〜が目安です。
そして大事なのは、どの業態に効かせたいかを先に決めることです。賃貸の反響はポータルが主戦場なので、自社サイトは来店前の確認ができれば十分。一方、売却の査定とオーナーからの管理受託は、自社サイトでしか取れません。物件がない段階の相談だからです。ここに予算を寄せるのが、いちばん結果につながります。
もうひとつ、不動産広告には宅建業法と表示規約という守るべきルールがあります。徒歩分数、新築の定義、成約済み物件の扱い。制作会社任せにせず、公開前に社内で確認する工程を必ず入れてください。設計の入口で迷ったら、いまの業務の比率をうかがいながら一緒に整理します。