「一人でやっているので、ホームページはまだ早いかなと思って」。独立して数年という方から、よくお聞きする言葉です。
紹介と口コミで仕事が回っている。SNSも一応やっている。だから急がない——。その感覚は、決して間違っていません。ただ、一人で動いているからこそ1件の取りこぼしが重いのも事実です。会社なら営業担当が拾えるものを、一人だと拾えないまま終わります。
この記事では、個人事業主・一人社長の方に向けて、限られた予算でも信用が伝わる「最小構成」を、現役のWeb制作者の目線でまとめました。自宅が事務所の場合の住所の扱いや、屋号・ドメインの名義といった、一人だからこそ迷いやすい部分にも触れています。
一人でやっているほど、実は取りこぼしが起きています
まず、ホームページが効く場面から整理させてください。ここを誤解したまま作ると、お金をかけた割に何も起きません。
名刺を渡したあと、相手は必ず名前を検索します
一人事業者のサイトでいちばんアクセスが多い入口は、検索エンジンではありません。名刺を渡した相手、紹介で名前を聞いた相手が、その場か帰り道に検索して見にくる。この「裏取りのアクセス」が実は多数を占めます。
制作をお手伝いした一人親方の工務店さんも、公開後に増えたのは検索流入より紹介された人からの直接の問い合わせでした。紹介した側も「ここ、ちゃんとしてるから」と言いやすくなったそうです。
つまり、一人事業者のホームページは集客の装置というより、信用の裏付けとして働きます。ここが分かると、載せるべきものが絞れます。
SNSだけだと「屋号の正体」が伝わりません
SNSは、日々の様子を伝えるのに向いています。ただ、初めての相手が知りたいのは日常ではありません。誰が・何を・いくらで・どこまでやってくれるのかです。
タイムラインは流れます。過去の投稿をさかのぼって全体像をつかむ人は、ほとんどいません。だから「屋号は見たことあるけど、結局何屋さんなのか分からない」という状態が起きます。
💡 ポイント
SNSとホームページは、どちらが上ということはありません。SNSは思い出してもらう場所、ホームページは確かめてもらう場所です。役割が違うだけです。優先順位に迷ったら、ホームページとSNS、どちらを先にやるべき?もあわせてどうぞ。
一人事業者のサイトに、最低限いるのは5つだけ
ページ数を増やす必要はありません。1ページに収まる量で十分に成立します。優先順にお伝えします。
1顔写真と、何をしてきた人かの経歴
法人なら会社概要で信用を担保できますが、一人の場合は本人がそのまま信用の中身になります。前職で何をしていたか、独立して何年か、どんな資格を持っているか。3〜4行で構いません。
2できることを、3つまでに絞る
ここが最大の分かれ目です。多くの方が「あれもこれもできます」と10個並べたくなりますが、読む側は3つ以上を覚えられません。絞ったほうが、かえって幅広い依頼が来ます。「これもできますか」と聞かれる余地は残るからです。
3料金の出し方(次の章で詳しく)
金額そのものを出すかは別として、お金の話に一切触れないのはおすすめしません。問い合わせをためらう最大の理由が「いくらか分からない怖さ」だからです。
4実績、または仕事の進め方
見せられる実績があるなら数点で十分です。守秘義務で出せない、独立したてで数が少ないという場合は、「どう進めるか」を書けば代わりになります。初回の打ち合わせで何を聞くか、納品までにどんなやり取りをするか。人柄はそこに出ます。
5連絡手段と、返信の目安
フォーム、メール、電話、LINE。どれでも構いませんが、「2営業日以内にご返信します」の一行を必ず添えてください。一人だと返信が遅れる日もあります。あらかじめ書いておけば、待たせても不安になりません。
逆に、最初はなくても困らないものもあります。ブログ、実績の詳細ページ、スタッフ紹介、English版。これらは全部あとから足せます。
料金を「出すか出さないか」で迷ったときの決め方
一人事業者から最も相談が多いのが、この論点です。相手や案件によって金額が変わるから書けない、というお悩みですね。書き方は3通りあります。
| 書き方 | 向いているケース |
|---|---|
| 定価で出す 例:施術60分 6,600円 |
メニューが決まっている仕事。整体・サロン・教室など |
| 幅で出す 例:15万〜40万円 |
案件ごとに変わる仕事。制作・設計・コンサルなど |
| 事例で出す 例:この内容で約25万円でした |
条件が複雑で幅も出しにくい仕事。工事・修繕など |
おすすめは2つ目の「幅で出す」です。上限を書くのが怖いという方は多いのですが、金額が書いていないサイトのほうが、実は問い合わせが減ります。予算が合わない相手からの相談を減らせるという意味でも、幅を出すほうが一人事業者には合っています。
3つ目の「事例で出す」は、見積もりを出した実際の案件を、内容と金額のセットで2〜3件並べる形です。「この内容ならこのくらい」という感覚が伝わるので、幅より具体的に響きます。
※料金の見せ方をどうするか、業種の話を含めて無料でご相談いただけます(相談だけでも大丈夫です)。
自宅が事務所のとき、住所と電話番号はどうするか
ここは一人事業者だけが直面する問題です。自宅の住所をインターネットに載せたくない——当然の感覚だと思います。整理して考えると、判断はそう難しくありません。
ネットで商品やサービスを販売するかどうかが分かれ目
サイト上で申し込みや決済まで完結させる(=通信販売にあたる)場合、特定商取引法により、事業者の氏名・住所・電話番号などを表示する義務があります。消費者庁のガイドでは、広告画面から表示場所へ簡単にたどり着ける形にすることも求められています。
一方、サイトは案内だけで、契約は対面や個別のやり取りで結ぶという使い方であれば、この表示義務の対象にはあたらないのが一般的です。「うちはどちらか」で扱いが変わります。
⚠️ 自己判断で決めないでください
オンライン講座やデジタル商品の販売、予約時の事前決済など、思っている以上に通信販売にあたる場面は広いです。ここでご紹介しているのは一般的な考え方です。ご自身の販売方法が該当するかどうかは、消費者庁のガイドを確認のうえ、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
載せる場合の現実的な選択肢
表示が必要な場合も、自宅をそのまま出す以外の方法があります。
- レンタルオフィス・バーチャルオフィス:住所を借りる形。月額数千円から。契約内容によって使える範囲が違うので、事前に確認してください
- 電話は転送番号やIP電話:携帯番号をそのまま出したくない場合の選択肢です
- 問い合わせフォームを主にする:表示義務のない使い方なら、フォームだけでも成立します
制作の現場で見ていると、住所を出さない代わりに「対応エリア」を書いている方が多いです。「西宮・尼崎を中心に、阪神間で対応しています」のように書けば、近さは伝わります。地図で見つけてもらいたい場合は、Googleビジネスプロフィールの整え方もあわせてご覧ください。
屋号・ドメイン・メールは、必ず自分の名義にしておく
あとから困る人がいちばん多いのが、この話です。金額の大小に関係なく、ここだけは押さえてください。
ドメインが制作会社の名義になっていて、乗り換えたいのに移せない。実際に起きている話です。ドメインは屋号と同じくらい大事な資産で、一度お客様に覚えてもらったものを変えるのは相当な損失になります。
もうひとつ、地味に効くのがメールアドレスです。フリーメールのままより、独自ドメインのアドレス(info@自分のドメイン)のほうが、見積書や請求書を送ったときの印象が変わります。ドメインを取れば、たいてい追加費用なしで作れます。
契約まわりの注意点はホームページのリース契約に注意で、公開後にかかる月額は維持費・保守費用の相場で詳しく扱っています。
最小構成でいくらかかるか
費用の話です。個人事業主・一人社長のケースでよくある範囲をまとめました。
| つくり方 | 費用の目安 | 向くケース |
|---|---|---|
| 自分で作る | 年1万〜3万円 ドメイン・サーバー等 |
作業に充てる時間があり、更新も自分で回したい |
| 1ページ完結を依頼 | 10万〜30万円 | まず名刺代わりの1枚が欲しい。最小構成の主戦場 |
| 数ページ+撮影を依頼 | 30万〜60万円 | 写真で世界観を伝えたい。サロン・教室・士業など |
| 問い合わせを取りにいく設計 | 60万円〜 | 広告や検索から新規を増やしたい段階 |
一人で始めるなら、1ページ完結の10万〜30万円から入る方が多いです。ここに撮影を足すかどうかで、上の段に上がります。顔写真だけはスマホの自撮りではなく撮ってもらうと、それだけで全体の印象が変わります。
費用を抑えたいときに削るべきは、ページ数と機能です。顔写真と原稿は削らないでください。ここが薄いサイトは、安く作れても信用の役に立ちません。安さの理由をもう少し知りたい方は格安ホームページ制作はなぜ安い?を、料金の内訳全体はホームページ制作の費用相場【全国・中小企業向け完全ガイド】をご覧ください。
なお、条件を満たせば補助金を使える場合があります。小規模事業者持続化補助金は、一人で事業をしている方も対象になり得る制度です。公募回ごとに要件が変わるため、必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。
最初から全部作らない。増やす順番はこれです
一人事業者のサイトは、育てていくものです。最初に完璧を目指すと、いつまでも公開できません。この順番で足していくのが現実的です。
1ページで公開する
5つの要素だけ。まず出す
名刺とSNSから つなぐ
裏取りの導線を先に作る
実績を 1件ずつ足す
仕事が終わるたびに追記
よくある質問を 増やす
実際に聞かれた質問だけ
検索を意識した ページを足す
新規を増やしたくなってから
大事なのは2番です。作っただけで放置され、名刺にもSNSのプロフィールにも載っていないサイトを、これまで何度も見てきました。公開したら、名刺・SNS・見積書のフッターにURLを入れる。この作業を同じ週にやってしまってください。
公開したのに反応がない場合の原因の探し方は、ホームページを作ったのに問い合わせが来ないにまとめています。依頼する前にそろえる原稿や写真については制作を依頼する前に準備するものをどうぞ。
一人分の予算で、どこまでできるかを聞いてみませんか
「まず名刺代わりの1枚でいい」「予算はこのくらいしかない」——その前提のままでご相談ください。今つくるべきか、もう少し先でいいのかも含めて、無料でお伝えします。いきなり発注でなくて構いません。しつこい営業もしません。
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よくある質問
Qあとで法人化したら、作り直しになりますか?
作り直す必要はありません。会社情報の表記を差し替えれば、そのまま使えます。ドメインを個人名義で取っていた場合は、法人名義へ移す手続きができるかを登録先で確認してください。屋号をそのまま社名にする予定なら、ドメインは最初から屋号で取っておくと後が楽です。
Q顔写真は、スマホの自撮りでもいいですか?
最初はそれでも公開できます。ただ、一人事業者のサイトでは顔写真が信用の中心になるので、余裕ができたタイミングで撮影をおすすめします。数万円で1時間ほど、屋外で数カットという頼み方もできます。
Q公開したあと、自分で更新できますか?
つくり方によります。料金や実績を自分で直したいなら、依頼する前にその希望を伝えてください。更新しやすい仕組みで組んでもらえます。ノーコードツール(プログラミング不要で編集できる仕組み)を使う方法もあります。
Q開業したばかりで実績がありません。それでも作る意味はありますか?
あります。実績の代わりに、前職での経験と、仕事の進め方を書いてください。「独立したばかりです」と正直に書いたうえで、何ができるかを具体的に示しているサイトは、きちんと読まれます。無理に実績があるように見せるほうが、あとで信用を失います。
参考情報
- 消費者庁「特定商取引法ガイド|通信販売」(表示義務の確認)
- 消費者庁「インターネットで通信販売を行う場合のルール」(サイト上の表示方法)
- 小規模事業者持続化補助金(公式)(対象・公募要領の確認)
- IT導入補助金(公式)(制度・対象ツールの確認)
- 日本レジストリサービス(JPRS)(ドメイン名の登録・管理の基礎知識)
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まとめ
個人事業主・一人社長のホームページは、1ページ完結で10万〜30万円、撮影や数ページ構成を含めて30万〜60万円が目安です。予算を抑えるならページ数と機能を削り、顔写真と原稿だけは削らない。これが最小構成の考え方です。
載せるものは5つ。顔と経歴、できること3つ、料金の出し方、実績か進め方、連絡手段と返信の目安。あとから足せるものに時間をかけるより、まず1枚を公開して、名刺とSNSからつなぐほうが先です。
そのうえで、ドメインの名義と管理画面のログインだけは自分で握っておいてください。一人で動いているぶん、あとから困ったときに助けてくれる人がいません。ここだけは最初に確認する価値があります。
「今つくるべきか」「いくらでどこまでできるか」の見当をつけたい段階でも構いません。事業の状況をうかがったうえで、必要なものだけをお伝えします。