ホームページ制作費の勘定科目と経費処理|資産計上と一括計上の分かれ目

ホームページの制作費を支払ったあと、経理の担当者や顧問税理士から「これ、どの科目で処理しますか」と聞かれて答えに詰まった。そんな経験はないでしょうか。

金額が大きいだけに、その年の経費にできるのか、資産として何年かに分けるのかで、手元に残る税金の額が変わります。

この記事では、ホームページ制作費の勘定科目と処理の考え方を、発注する側の立場から整理します。あわせて、2026年4月に変わったばかりの金額の区分についても触れます。

ネット上の解説記事はまだ古い金額のままのものが多く、30万円と40万円で判断が変わる価格帯は、ちょうどホームページ制作と重なります。

⚠️ はじめにお断りします

この記事は一般的な考え方の整理です。税務の取扱いは、契約の内容や会社の状況によって変わります。実際の処理は、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。私たちは制作者であって、税務の専門家ではありません。

📋 この記事でわかること
  • ✓多くのホームページ制作費が、その年の経費になる理由
  • ✓資産に振り分けられる分かれ目は、金額ではないということ
  • ✓2026年4月に変わった金額の区分(30万円→40万円)
  • ✓ドメイン・サーバー・保守費の科目の目安
  • ✓発注の時点でやっておくと、経理が楽になること

結論:多くのホームページ制作費は、支払った年の経費にできます

先に結論をお伝えします。会社案内のような一般的なホームページであれば、制作費は支出した事業年度の経費として処理されるのが一般的です。

勘定科目としては「広告宣伝費」が使われることが多く、ほかに「販売促進費」「支払手数料」が選ばれる場合もあります。

考え方の根拠は、ホームページの性質にあります。自社や商品をPRするために作るものであり、内容は随時更新されていく。つまり、支出の効果が長期にわたって固定されないと見るわけです。

「国税庁が認めている」と書かれた記事には、注意が必要です

ここで、正直にお伝えしておきたいことがあります。

この考え方は、以前は国税庁のタックスアンサーに「ホームページの制作費用について」という項目として掲載されていました。ところが、現在この記載は国税庁のサイトから削除されています。

それにもかかわらず、「国税庁が広告宣伝費として認めています」と断定している解説記事が今も多く見られます。

削除された理由が公式に説明されているわけではありません。ただ、いま国税庁が明示している見解ではないことは事実です。

実務として広告宣伝費で処理されている例が多いのは確かですが、「国が認めているから大丈夫」という理解で進めるのは危ういと考えてください。判断は税理士に委ねるのが安全です。

資産に振り分けられる分かれ目は、金額ではなく「プログラム」

ここが、この話でいちばん誤解されているところです。

「30万円を超えたら資産だと聞いた」とおっしゃる社長がいらっしゃいますが、順序が逆です。金額の話が出てくるのは、そのホームページが資産(ソフトウェア)に当たると判断されたあとです。

分かれ目になるのは、制作物のなかにプログラムが組み込まれているかどうかです。

ソフトウェアに当たりやすいもの、そうでないもの

制作の現場感覚でいうと、おおよそ次のように分かれます。

⭕ 通常は経費になりやすい

  • ✓会社案内・事業紹介のページ
  • ✓デザイン・原稿・写真撮影
  • ✓お知らせやブログの更新機能
  • ✓一般的な問い合わせフォーム

❌ ソフトウェアとされやすい

  • ✕予約システム・空き状況の管理
  • ✕会員登録・ログイン機能
  • ✕ECのカート・決済処理
  • ✕在庫や顧客データとの連携

ソフトウェアに当たると判断された部分は、無形固定資産として計上し、減価償却していくことになります。

自社で利用するソフトウェアの耐用年数は、国税庁のタックスアンサーで5年とされています(研究開発用など一部を除く)。

1本のサイトに、両方が混ざることがあります

やっかいなのは、ホームページ全体がどちらか一方に決まるとは限らない点です。

たとえば、会社案内のページに予約システムを付けた場合。会社案内の部分は経費、予約システムの部分はソフトウェアとして、分けて処理することになるケースがあります。

このとき必要になるのが、見積書のなかでそれぞれがいくらだったのかという内訳です。ここは後半であらためて触れます。

金額の区分は、2026年4月に変わりました

ソフトウェアとして資産に計上する場合、取得価額によって処理の選択肢が変わります。

そしてこの金額の基準が、2026年(令和8年)4月から引き上げられました。ホームページ制作にとっては影響の大きい改正です。

取得価額 処理の選択肢
10万円未満 少額の減価償却資産として、その年に全額を損金にできる
20万円未満 一括償却資産として、3年間で均等に償却する方法を選べる
40万円未満
(改正前は30万円未満)
中小企業者等であれば、特例で全額を損金にできる(年間合計300万円まで)
40万円以上 原則どおり、耐用年数5年で減価償却する

30万円台の案件が、いちばん影響を受けます

注目していただきたいのが3段目です。中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、対象となる取得価額が30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。

令和8年度税制改正の大綱に「対象となる減価償却資産の取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げる」と明記されています。適用期限も3年延長されました。

あわせて、常時使用する従業員の数が400人を超える法人は対象から除外されています。この点も変わりました。

ホームページ制作の価格帯を考えると、この10万円の差は小さくありません。30万〜40万円のシステム費用は、以前なら5年かけて償却するしかなかったものが、その年に全額を損金にできる可能性が出てきたということです。

⚠️ 古い情報に注意してください

この改正は令和8年4月1日以後に取得した資産から適用されます。それ以前に取得したものは、従来どおり30万円未満が基準です。

なお、国税庁のタックスアンサー「No.5408」は記事作成時点で「令和7年4月1日現在法令等」として30万円のまま掲載されています。公式ページを見て30万円と書いてあっても、それが最新とは限りません。自社の決算期でどちらが適用されるかは、税理士にご確認ください。

そもそも経費なら、金額は関係ありません

念のため繰り返します。ここまでの金額の話は、すべてソフトウェアに当たると判断された場合のものです。

プログラムを含まない通常のホームページとして経費処理されるのであれば、制作費が100万円でも200万円でも、その年の経費です。金額の区分は出てきません。

「高かったから資産にしないといけない」というのは、よくある思い込みです。

制作費以外の費目は、どの科目に入れるか

ホームページにまつわる支出は、制作費だけではありません。毎年かかるものもあります。

それぞれの科目の目安は次のとおりです。会社によって運用が違うため、あくまで一般的な例としてご覧ください。

支出の内容 よく使われる科目
サイト制作費(通常) 広告宣伝費/販売促進費
システム開発部分 ソフトウェア(無形固定資産)
ドメイン取得・更新料 通信費/支払手数料
サーバーレンタル料 通信費/賃借料
月額の保守・更新代行 支払手数料/外注費
写真撮影・原稿作成 広告宣伝費/外注費
リスティング広告の出稿 広告宣伝費

毎年かかる費用の相場感は、ホームページの維持費・保守費用の相場にまとめています。

💡 一度決めた科目は、変えない

ドメイン代を通信費にするか支払手数料にするかは、どちらでも大きな問題にはなりません。大事なのは毎年同じ科目で処理し続けることです。年によって科目が変わると、前年との比較ができず、税理士も確認に時間を取られます。

経理で困らないために、発注の時点でやっておくこと

ここからは、制作を請ける側から見た実務の話です。処理で揉めるかどうかは、発注の時点でほぼ決まります。

見積書の内訳を、分けてもらってください

税理士から「このホームページ、システムは入っていますか」と聞かれて、答えられない社長は少なくありません。

制作会社に聞けば分かる話なのですが、決算の時期になってから問い合わせると、担当者が変わっていたり、当時の資料が出てこなかったりします。

そこで、見積もりの段階で「税務処理のために、内訳を分けて出してほしい」と伝えてください。具体的には、次のように分かれていると理想的です。

  • ディレクション・企画
  • デザイン
  • コーディング(ページの実装)
  • システム開発(予約・会員・カートなど)
  • 写真撮影・原稿作成
  • 公開後の保守(月額)

この依頼を嫌がる制作会社は、まずありません。むしろ、分けて出せない会社は要注意です。自社で開発していないか、内訳を把握していない可能性があります。

見積書の読み方そのものは、ホームページ制作の見積書の読み方で項目別に解説しています。

契約書と請求書の日付を確認する

もうひとつ、意外と見落とされるのが日付です。

資産として計上する場合、いつ事業の用に供したか(公開したか)が基準になります。決算期をまたぐ制作では、着手した年度と公開した年度が別になることがあります。

制作期間は、内容にもよりますが2〜3か月かかるのが一般的です。決算月の直前に発注すると、想定していた年度に間に合わないことがあります。

節税を意識して発注時期を決めるのであれば、この点は先に税理士と相談しておいてください。

補助金を使う場合は、先に相談を

IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金を使ってホームページを作る場合、受け取った補助金の扱いという論点が別に発生します。

補助金は原則として収入になりますが、一定の要件のもとで課税を繰り延べる方法が設けられている場合もあります。制度の利用を決める前に、税理士に相談しておくのが安全です。

どの補助金が使えるかは、ホームページ制作で使える補助金をご覧ください。

※ 制作費の全体像がまだ掴めていない場合は、ホームページ制作の費用相場から先にご覧ください。費用感と内訳を無料でご相談いただくこともできます。

よくある質問

Q個人事業主でも、考え方は同じですか?

基本的な考え方は共通です。少額減価償却資産の特例も、青色申告をしている一定の個人事業主が対象に含まれます。ただし法人とは要件や手続きが異なる部分があるため、確定申告の前に税理士または税務署にご確認ください。

Qリニューアルの費用も、同じ扱いになりますか?

デザインや原稿を作り直すだけであれば、新規制作と同じ考え方になるのが一般的です。ただし、既存のシステムを大きく作り替える場合は、新たなソフトウェアの取得として扱われることがあります。どこまで手を入れるかで変わるため、見積書の内訳を持って相談してください。

Q制作会社が税務処理について教えてくれないのですが。

税務の判断を制作会社が行うことはできません。税理士法との関係があるためです。制作会社にお願いできるのは、あくまで「何にいくらかかったか」を正確に示すことまでです。その資料をもとに、税理士が判断します。内訳の提示は遠慮なく依頼してください。

Q制作費を分割で払う場合は、どうなりますか?

支払いの回数と、経費や資産の計上時期は別の話です。着手金と完成時で2回に分けて払ったとしても、処理は完成・公開の時点を基準に考えるのが一般的です。リース契約の形になっている場合は扱いがまったく変わるため、契約書を持って税理士にご相談ください。

参考情報

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まとめ

ホームページ制作費の処理は、次の順番で考えてください。

まず、制作物にプログラムが入っているかどうか。入っていなければ、支出した年の経費(広告宣伝費など)として処理されるのが一般的です。金額の大小は関係ありません。

プログラムが入っていれば、その部分はソフトウェアとして無形固定資産になり、耐用年数5年で償却します。金額の判断は、そのあとです。

そして2026年4月から、中小企業者等の特例の基準が40万円未満に引き上げられました。30万円台のシステム費用は、判断が変わる可能性があります。ネット上の解説はまだ30万円のままのものが多いので、ご注意ください。

最後にもう一度お伝えします。この記事は一般的な整理です。実際の処理は、見積書の内訳を持って顧問税理士にご相談ください。

制作を依頼する側としてできるのは、内訳の分かる見積書をもらっておくこと。これだけで、決算期の手間は大きく減ります。

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