「元請けさんからの紹介で回ってきたけれど、そろそろ自分たちでも仕事を取りにいきたい」。電気工事・設備工事の会社から、こうしたご相談をいただくことが増えました。
ただ、いざホームページを作ろうとすると、多くの会社が同じところで手が止まります。「元請け向けに書けばいいのか、一般のお宅向けに書けばいいのか」が決まらないのです。
この2つは、読む人も、知りたいことも、まったく違います。そこを分けないまま1ページに詰め込むと、どちらにも刺さらないサイトができあがります。
この記事では、電気工事・設備工事会社のホームページを、読者を分けて設計する方法を解説します。あわせて、この業種にだけある「法令で掲げる情報をサイトにも載せる」という論点も扱います。
電気・設備工事会社のサイトには、読者が2種類いる
まず整理したいのが、誰に向けたサイトなのかという点です。電気工事・設備工事の会社には、性質のまったく違う2つの取引先があります。
ひとつは元請け。ゼネコン、工務店、ビル管理会社、設備メーカーなどです。もうひとつがエンドユーザー。一般のお宅、店舗オーナー、小さな事業所からの直接依頼です。
この2者は、御社のサイトを開いたときに探しているものが正反対です。
見たいものが、これだけ違う
| 元請け(工務店・ゼネコン等) | 一般家庭・店舗 | |
|---|---|---|
| まず確かめること | 同じ種類の工事をやった経験があるか | この会社は本物か、怪しくないか |
| 次に見ること | 許可・登録、有資格者の人数、動ける体制 | いくらかかるか、いつ来てくれるか |
| 知りたい実績の粒度 | 建物用途・規模・工期などの条件 | 自分と同じ困りごとを解決した話 |
| 連絡の取り方 | 担当者宛にメール・フォーム | その場で電話をかけたい |
| 専門用語 | 通じる。むしろ書いてある方が安心 | 通じない。分電盤も伝わらないことがある |
表を見ていただくと分かるとおり、両者は求めるものが真逆です。元請けは専門用語で書かれた条件表を読みたがり、一般のお客様は「怪しくないか」から入ります。
1ページに混ぜると、両方に届かなくなる
制作の現場でよく見るのが、トップページに実績も料金も会社概要も全部並べてしまったサイトです。作る側としては親切のつもりなのですが、結果は芳しくありません。
元請けの担当者からすると、一般向けの「電気のことでお困りではありませんか」という呼びかけが並ぶ分、必要な施工条件にたどり着くまでが遠くなります。
逆に一般のお客様には、高圧受変電設備やキュービクルといった言葉が最初に目に入り、「うちみたいな小さい話で連絡していいのだろうか」と手が止まります。
解決策はシンプルで、トップページで先に道を分けることです。
入口を2つ用意して、それぞれ別の階層に進んでもらう。ページ数は増えますが、作り込むのは入口の1階層だけで効果が出ます。
💡 ポイント
どちらか一方の比重が明らかに大きい会社もあります。売上の9割が元請けからなら、一般向けは1ページにまとめて構いません。分けるかどうかではなく、比重に合わせて厚みを変えると考えてください。
「怪しい電気屋ではない」と示すことが、サイトの最初の仕事
一般のお客様向けの設計を考えるとき、いま無視できない事情があります。電気設備をめぐる点検商法のトラブルが、急激に増えているのです。
国民生活センターは2026年9月16日、分電盤の点検商法について注意喚起を公表しました。相談件数の推移は次のとおりです。
| 年度 | 分電盤の点検商法に関する相談件数 |
|---|---|
| 2022年度 | 14件 |
| 2023年度 | 39件 |
| 2024年度 | 1,290件 |
| 2025年度 | 6,545件(前年度の約5倍) |
| 2026年度(7月31日まで) | 2,223件 |
同センターによると、2025年度の相談は契約当事者の8割超が70歳以上でした。電力会社を装った電話や、「法律で耐用年数が15年と決まっている」といった事実と異なる説明が使われています。
疑われているのは、手口ではなく「電気屋そのもの」
ここで、まじめに仕事をしている会社ほど割を食う構図が生まれています。
消費者は「電話で点検を持ちかけてくる電気関係の業者には気をつけろ」と繰り返し聞かされています。その警戒は、悪質な業者だけを選んで向けられるわけではありません。
そのため、チラシを見た方も、紹介で名前を聞いた方も、依頼の前にまず会社名で検索します。そこで何も出てこない、あるいは会社の実体が読み取れないサイトしか出てこないと、その時点で候補から外れます。
裏を返せば、身元がはっきり分かるサイトを持っているだけで、地域のなかで抜きん出た安心材料になります。
載せるべき情報は、法令が答えを出している
何を載せれば身元を示せるのか。電気工事業については、考えるまでもなく答えが決まっています。
電気工事業者は「電気工事業の業務の適正化に関する法律」により、営業所と施工場所ごとに標識(登録票)を掲げることが義務づけられています。記載事項も法令で定められています。
登録電気工事業者の場合、標識に記載するのは次の項目です。
そして重要なのがここからです。経済産業省は2023年11月10日、この標識と同じ内容を自社のホームページ等にも掲載するよう、電気工事業者に協力を依頼しています。
消費者が、適法に登録を受けた業者かどうかを簡単に見分けられるようにするため、というのがその理由です。
つまり国が「サイトに載せてください」と言っている項目が、すでに存在するということです。これは他の業種にはない、電気工事業だけの強みだと考えてください。
⚠️ 注意
ホームページへの掲載は協力依頼であって、義務ではありません。掲示義務があるのは営業所と施工場所の標識です。記事や制作会社の説明で「サイトへの掲載も義務」と書かれていることがありますが、正確ではありません。
また、登録・通知・みなし登録・みなし通知のどれに当たるかで記載事項が変わります。自社がどの区分かは、登録を受けた都道府県または産業保安監督部の案内で必ず確認してください。
資格の書き方は、盛らずに具体的に
保有資格も、身元を示す有力な材料です。第一種電気工事士、第二種電気工事士、電気主任技術者、管工事施工管理技士などが該当します。
ここで制作現場からひとつ。資格の表記は「有資格者多数在籍」ではなく、人数を書いてください。
「多数」は読む人によって想像する数が違います。「第一種電気工事士3名、第二種電気工事士5名」と書かれている方が、規模は小さくても具体的で信用されます。
数が少ないことを気にされる社長は多いのですが、一般のお客様が知りたいのは規模ではありません。資格を持った人が確かにいるという一点です。
※ このあたりの「何を載せるか」の判断は、ホームページ制作を依頼する前に整理しておくと制作がスムーズに進みます。準備するものはホームページ制作を依頼する前に準備するものにまとめています。
写真映えしない工事の、実績の見せ方
電気・設備工事の会社がホームページで最初につまずくのが、施工事例です。
工務店やリフォーム会社であれば、完成した住まいの写真がそのまま営業材料になります。ところが電気工事の成果物は、分電盤、配線、盤内、埋設管です。
正直に言えば、写真を並べても、素人目にはどれも同じに見えます。きれいに結線された盤の美しさは、同業者にしか伝わりません。
ですから、この業種では写真を主役にしない見せ方に切り替えてください。
元請け向けは「条件表」として出す
元請けの担当者が施工事例を見るとき、探しているのはただ一点、同じ条件の工事をやったことがあるかです。
そこで、写真1枚に短い説明を添える形ではなく、条件を項目化した一覧で出します。具体的には次の4つです。
工事の種類
動力・照明・受変電・弱電など
建物の用途
工場・店舗・集合住宅・戸建など
規模
延床面積・容量・回路数など
工期と体制
何日で、何人で入ったか
この4項目がそろっていれば、写真がなくても元請けは判断できます。逆に、きれいな写真があっても規模と工期が書かれていなければ、問い合わせの前に電話で聞き直すことになります。
制作の実務で感じているのは、写真が弱い業種ほど、テキストの「型」を決めておくと更新が続くということです。
項目が決まっていれば、現場が終わったときに4つ埋めるだけで1件増えます。毎回どう書くか考える形にしてしまうと、公開から半年で更新が止まります。
一般向けは「困りごと」から入る
同じ実績でも、一般のお客様に見せるときは切り口を変えます。工事の種類ではなく、お客様が最初に感じた困りごとを見出しにしてください。
- ブレーカーが頻繁に落ちるようになった
- コンセントを増やしたいが、どこまでできるか分からない
- 照明を人感センサーに替えて電気代を下げたい
- エアコンの専用回路がないと言われた
お客様は「動力工事」を探しているのではなく、目の前の困りごとの解決先を探しています。同じ症状の事例が1件あるだけで、問い合わせのハードルは大きく下がります。
⚠️ 現場写真を載せる前に
施工写真には、施主や元請けの情報が写り込むことがあります。看板、図面、表札、車両のナンバー、作業員の顔などです。元請け案件は、公開の可否を必ず先に確認してください。建物が特定できない範囲に絞る、社名を伏せるといった配慮が要る場合もあります。
元請けから声がかかるサイトに載っていること
下請けの立場から、新しい元請けとの取引を増やしたい。この記事を読まれている方の多くが、そこを狙っておられると思います。
元請けが新しい協力会社を探すのは、多くの場合「手が足りない」ときです。急いでいるので、判断は速く、見るところも絞られています。
許可・登録の状況を、そのまま書く
まず確認されるのが、法的にどこまでの工事を請けられるかです。
建設業許可について整理しておくと、建築一式工事以外の工事では、1件の請負代金が500万円未満(消費税込み)であれば許可は不要とされています。いわゆる軽微な建設工事です。
ただし、電気工事業の登録は建設業許可とは別の制度です。建設業許可を持っていても、電気工事を行うなら「みなし登録電気工事業者」としての届出が必要になります。
元請けから見れば、このあたりが明記されているかどうかで、任せられる工事の上限が分かります。書いていなければ、確認の手間を嫌って別の会社に声がかかります。
「いま動けるか」が伝わるように書く
許可と同じくらい見られているのが体制です。具体的には次のような情報です。
- 対応エリア(日帰りで行ける範囲がどこまでか)
- 有資格者の人数と内訳
- 常時動ける班の数、保有する車両や高所作業車
- 夜間・休日の工事に対応できるか
- 協力会社としての新規受注を受け付けているかどうか
最後の1行は、意外と抜けています。「協力会社さまを募集しています」とは書いてあるのに、自社が協力会社として入る側の受付については何も書かれていないサイトを、しばしば見かけます。
元請けの担当者に「この会社は下請けで入ってくれるのだろうか」と考えさせた時点で、連絡は来にくくなります。一文でいいので明記してください。
人手不足なら、採用と兼ねる設計にする
電気・設備工事の会社では、受注より先に人の確保が課題になっている場合も多いはずです。
その場合、同じサイトで採用も受けられるようにします。求人媒体に出すときも、応募前に必ず会社名で検索されるため、サイトの中身がそのまま応募数に効いてきます。
採用ページに何を載せるかは、採用サイト制作の費用相場と作り方で詳しく解説しています。
なお、元請け向けの情報設計という点では、BtoB取引に特化した考え方が参考になります。BtoB・製造業のホームページ制作ガイドもあわせてご覧ください。
電気・設備工事会社のホームページ制作の費用相場
費用の話に移ります。ここまで挙げた内容をどう実現するかで、金額はおおよそ次のように変わります。
| 作り方 | 費用の目安 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| テンプレート中心 (5〜8ページ) |
20万〜50万円 | まず会社の実体を示せればよい。元請け比率が高く、名刺代わりで足りる |
| セミオーダー (10〜15ページ) |
50万〜120万円 | 元請け向けと一般向けで入口を分ける。施工実績を自社で更新したい |
| オリジナル制作 (20ページ以上) |
120万〜300万円 | 採用も本格的に回す。工事の種類ごとにページを分け、検索から集める |
あわせて、公開後に月額で保守費用がかかります。サーバーとドメインの維持に加え、更新の代行を頼むかどうかで幅が出ます。
費用の内訳がどうなっているかは業種を問わず共通ですので、ホームページ制作の費用相場【全国・中小企業向け完全ガイド】をご覧ください。見積書の読み方はホームページ制作の見積書の読み方にまとめています。
この業種で、お金をかける価値があるところ
限られた予算をどこに配分するか。電気・設備工事の会社であれば、優先順位は次のようになります。
最優先は施工実績を自社で追加できる仕組みです。制作会社に毎回依頼する形だと、1件1万円前後の更新費がかかり、結局は更新されなくなります。
次がスマートフォンでの電話のかけやすさ。一般のお客様は困ってから探すため、スマホで開いてそのまま電話をかけます。番号がタップできない、小さくて押しにくいというだけで取りこぼします。
逆に、あと回しでよいのが凝ったデザインとアニメーションです。この業種のお客様は格好よさではなく確かさを見ています。
なお、極端に安い制作プランを検討される場合は、安さの理由を理解したうえで選んでください。格安ホームページ制作はなぜ安い?で仕組みを解説しています。
制作費には補助金を使える場合もあります。詳しくはホームページ制作で使える補助金をご覧ください。制作会社の選び方は失敗しないホームページ制作会社の選び方、完成までの進み方はWebサイト制作の流れと進め方が参考になります。
地域のお客様から探されるなら、あわせてやること
一般家庭からの直接依頼を増やしたい場合、ホームページと同じくらい効くのがGoogleビジネスプロフィールです。
「地名+電気工事」で検索したときに地図付きで表示されるあの枠は、無料で登録できます。サイトを作ったら、必ず同じ情報で登録してください。
登録の手順はGoogleビジネスプロフィールの整え方で解説しています。
よくある質問
Q登録番号をサイトに載せると、悪用される心配はありませんか?
登録番号は、営業所と施工場所で標識として掲げることが法令で義務づけられている情報です。もともと公開が前提の情報であり、経済産業省もホームページへの掲載を求めています。載せない方が「確認できない業者」として敬遠される不利益の方が大きいと考えてください。
Q施工実績の写真が1枚もありません。それでもサイトは作れますか?
作れます。この業種では、写真よりも工事の条件を文字で整理した一覧の方が実用的です。まずは工事の種類・建物用途・規模・工期の4項目で過去の案件を書き起こしてください。写真は今後の現場で撮りためて、後から足していく形で問題ありません。
Q料金表は載せた方がよいのでしょうか。現場ごとに変わるので迷っています。
一般のお客様向けには、目安だけでも載せることをおすすめします。「コンセント増設 1万5千円〜」のように、下限と「現場により変動します」の一言があれば十分です。元請け向けのページには不要です。金額が一切ないと、問い合わせ自体をためらわれます。
Q公開してから、どれくらいで問い合わせが来ますか?
検索から人が来るまでには、早くて3か月、通常は半年ほどかかります。ただし電気・設備工事の場合、名刺やチラシから会社名で検索して見に来る方が先に増えます。その意味では、公開直後から「確認される場所」としては機能します。
参考情報
- 電気工事業者が掲示すべき標識内容のホームページ等での掲載について(協力依頼)|経済産業省
- 電気工事業標識の掲示等について|兵庫県
- 分電盤の点検商法にご注意ください(2026年9月16日公表)|国民生活センター
- 建設業の許可とは|国土交通省
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- 採用サイト制作の費用相場と作り方|応募が集まる情報設計
- ホームページを作ったのに問い合わせが来ない|原因の見つけ方と直し方
まとめ
電気・設備工事会社のホームページは、読者が2種類いるという前提から設計してください。
元請けが見るのは、同種工事の経験と、許可・資格・体制です。一般のお客様が見るのは、この会社が信用できるかどうかと、いくらでいつ来てくれるかです。入口を分けるだけで、どちらにも届くようになります。
そのうえで、この業種には他にない武器があります。法令で掲げることが決まっている標識の内容を、そのままサイトにも載せることです。点検商法への警戒が強まっているいま、身元が確認できる会社であることは、それだけで選ばれる理由になります。
施工事例は、写真ではなく条件の一覧で。項目を決めて型にしておけば、現場が終わるたびに1件ずつ増えていきます。
まずは、御社の登録番号と有資格者の人数を書き出すところから始めてみてください。それが、サイトの一番大事な部分になります。
元請け向けと一般向け、どう分けるかから相談できます
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