「開業がバタバタで、ホームページまで手が回らなくて」。開業して半年ほど経った方から、こう言われることがよくあります。
気持ちは分かります。物件、内装、備品、届出、仕入れ。開業前は山積みで、ホームページは「落ち着いてから」に回されがちです。ただその「落ち着いてから」が半年後になると、いちばん問い合わせが欲しい時期を空振りします。
この記事は、開業準備とホームページをどう並べるかという時期と順番の話です。何をどう作るかという中身の話ではありません。
開業の前と後で、悩みの1位が入れ替わります
まず、開業した方がどこでつまずいているかを見てください。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」は、苦労したことを時期別に尋ねています。結果ははっきり分かれました。
| 時期 | 1位 | 2位 |
|---|---|---|
| 開業時に苦労したこと | 資金繰り、資金調達(56.9%) | 顧客・販路の開拓(49.9%) |
| 現在苦労していること | 顧客・販路の開拓(48.8%) | 資金繰り、資金調達(36.2%) |
開業時はお金の心配が最も大きい。ところが事業が始まると、1位が「顧客・販路の開拓」に入れ替わります。資金繰りは56.9%から36.2%へ下がるのに、顧客開拓はほとんど下がりません。
つまり開業直後から、悩みは「どうやって見つけてもらうか」に移ります。ホームページはそこを担う道具です。それでも後回しになるのは、開業前は資金の話で頭がいっぱいだから。この順番のズレが半年の空白を生みます。
⚠️ 開業直後の半年が、いちばんもったいない
あいさつ回り、SNSでの開業報告、看板を見た人。開業直後はいちばん名前を検索してもらえる時期です。そこで何も出てこないと、その関心は戻ってきません。
目安は「開業日の1か月前に公開」。そこから逆算してください
結論から言うと、開業日の1か月前には公開されている状態を目標にしてください。同時ではなく1か月前です。開業前後は想定外のことが起きやすく、公開直後のサイトは検索結果に出るまで時間がかかるためです。
逆算すると、動き出しはこのタイミングになります。
4〜5か月前 屋号を決める
ドメインもここで押さえる
3〜4か月前 制作会社を探す
相見積もりに2〜3週間みる
3か月前 制作を開始
原稿と写真の準備も並行で
1.5か月前 名刺を入稿
URLが確定してから刷る
1か月前 サイト公開
開業案内もここから出せる
「そんなに前から動けない」と思われたかもしれません。実際、開業日が決まってから慌てて動く方がほとんどです。そのときは公開を開業後にずらしてでも、屋号とドメインだけは先に決めてください。この2つが止まると、名刺もチラシもメールも動きません。
工程ごとの日数はホームページ制作にかかる期間はどれくらい?に出しています。
⚠️ 開業日ちょうどの公開を狙うと、中身が空になります
開業日に間に合わせることが目的になると、原稿が埋まらないまま「準備中」だらけで公開しがちです。開業直後は本業が忙しく、そのまま半年放置されます。ページ数を減らしてでも、中身が入った状態で出すほうが結果的に早いです。
名刺やチラシより先に、この3つを決めてください
開業準備でいちばん多い手戻りが、ここで起きます。先に決めておきたいのは屋号・ドメイン・メールアドレスの3つ。連鎖していて、上から順にしか決められません。
名刺を先に刷ってしまい、作り直しになる方が多いです
開業のご相談でいちばん多い手戻りです。名刺だけ先に発注し、あとからURLを載せられないと気づくパターン。あいさつ回りは開業前から始まるので、名刺は早く作りたくなります。
URLが未定なら、名刺は最小限の枚数だけ先に刷るのが現実的です。100枚だけ刷り、サイト公開後に本刷りする。これなら傷が浅く済みます。
屋号は「読み方」と「かぶり」を先に見ておく
屋号は自由に決められますが、あとで困りやすい点が2つあります。
ひとつは読み方です。当て字や造語は覚えてもらいにくく、電話で名乗るたびに説明が要ります。検索でも打ち間違えられます。
もうひとつはかぶりです。同じ屋号が近隣や同業にあると、検索したとき相手のサイトが先に出てきます。屋号を検索窓に入れて、上位に何が出るかだけでも見ておいてください。
ドメインの名義も、開業時に決めておくと後が楽です(ホームページのドメイン・データ・著作権は誰のもの?)。
開業前にやること、開業後で間に合うこと
全部を開業前に終わらせる必要はありません。むしろ開業後でいいものを前倒ししようとして、全体が止まります。線引きの目安はこうです。
| 開業前に決めておく | 開業後で間に合う |
|---|---|
| 屋号・ドメイン・メールアドレス | ブログや実績紹介の記事 |
| サービス内容と料金の出し方 | お客様の声・導入事例 |
| 問い合わせ先(電話・フォーム) | 写真の撮り直し・差し替え |
| 営業時間・定休日・場所 | ページの追加、SEOの調整 |
右側は営業を始めてからのほうが良いものが作れます。お客様の声は、お客様が来てからしか作れません。左側は決まっていないと商売が始まらないもので、問い合わせ先の無いサイトはただのパンフレットです。
原稿や写真の具体的な中身はホームページ制作を依頼する前に準備するものにあります。
開業直後、お金をかける順番
開業時は使えるお金に限りがあります。ホームページに何十万も出せない、が正直なところだと思います。
最初から完成形を目指さなくて構いません。同じ調査でも開業費用は「250万円未満」20.1%、「250万〜500万円未満」21.7%と、4割以上が500万円未満です。優先順位はこうお考えください。
💡 開業直後にお金をかける順番
①ドメイン(年間1,000〜5,000円程度)→ ②検索で見つかる最小構成のサイト→ ③写真→ ④デザインの作り込み。①は数千円で、しかも後から取り直しが効きません。ここだけは開業前に押さえてください。
最小構成の内訳は個人事業主・一人社長のホームページ制作、全体の相場観はホームページ制作の費用相場をご覧ください。
創業や販路開拓に使える補助金もあります。ただし交付決定の前に発注すると対象外になるのが原則です。使う予定があるなら、制作会社を探す前に確認してください(ホームページ制作で使える補助金)。
※開業のスケジュールに合うかどうかだけでも、無料でご相談いただけます。
開業のかたちで、やることが少し変わります
店舗を構えるのか、訪問やオンラインで完結するのか。ここで準備の中身が変わります。
実店舗・訪問型なら、Googleビジネスプロフィールも同時に
店舗があるなら、地図に出るかどうかが集客に直結します。ホームページと同じタイミングで、Googleビジネスプロフィール(地図やGoogle検索に出る無料の店舗情報)も登録してください。
ただし誰でも登録できるわけではありません。Googleの公式ヘルプは対象を「顧客が訪れることのできる実在の店舗や拠点、または顧客のいる場所に出向く」ビジネスとし、実店舗にはビジネスの名称の掲示を常設する必要がありますとしています。看板のない自宅兼事務所でオンライン完結の商売は、対象外になることがあります。
手順はGoogleビジネスプロフィールの整え方にまとめました。
法人設立なら、登記の前に商号とドメインを
法人を作る場合、商号(会社名)は登記で確定します。登記後に「このドメインが取れなかった」と気づくと、名前と住所がちぐはぐになります。商号を絞る段階で、ドメインの空きを見ておいてください。数分で済みます。
税務の届出にも、日付が絡みます
ホームページから少し離れますが、日付が絡む届出だけ押さえておいてください。国税庁の案内では、個人事業の開業届出の提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」とされています。「開業から1か月以内」と説明されることも多いのですが、現在の案内はこの表記です。
青色申告を選ぶ場合は期限がはっきりしています。「その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2月以内」に提出が必要です。
⚠️ 税務の判断は専門家へ
ここに書いたのは国税庁の案内にある一般的な内容です。事業の形態や開業日の考え方によって扱いが変わることがあります。個別の判断は、所轄の税務署か税理士にご確認ください。
なお融資や補助金の申請書類には、ホームページのURLを書く欄があることがあります。空欄でも受け付けてもらえる場合が多いのですが、1ページでも公開されていると説明が早いのは確かです。
開業日に間に合うかどうか、一緒に見ます
「開業が3か月後だけど間に合いますか」「屋号だけ決まっています」——この段階のご相談がいちばん多いです。スケジュールと、先に決めておくことを整理してお伝えします。無料です。いきなり発注ではありませんし、しつこい営業もしません。
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よくある質問
Q開業前で、まだ売上がありません。それでも契約できますか?
問題ありません。開業前のご依頼は珍しくないです。ただ着手金を求められることが多くなります。分割や納品後払いに対応できるか、最初に聞いておいてください。
Qとりあえず「準備中」の1ページだけ先に公開するのは有効ですか?
屋号・事業内容・連絡先・開業予定日が載っているなら意味があります。名刺にURLを載せられますし、検索で存在が確認できます。ただし「Coming Soon」だけのページは、かえって不安にさせます。
Q屋号が変わるかもしれません。ドメインは待つべきですか?
迷っているなら待ってください。ドメインは取り直しが効かず、変えるとURLも変わります。ただし年間数千円なので、候補が2つに絞れているなら両方押さえる手もあります。
Q開業から1年経ってしまいました。今からでも遅くないですか?
遅くありません。むしろ1年営業したぶん、載せられる中身が増えています。お客様の反応やよく聞かれる質問が分かっている状態は、開業前より強いです。
参考情報
- 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(PDF・2025年12月5日公表/調査時点2025年8月・回収2,165社)
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(提出時期・様式)
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」(提出期限)
- Googleビジネスプロフィール ヘルプ「ビジネスの適格性」(登録できるビジネスの要件)
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- ホームページ制作で使える補助金|IT導入補助金・持続化補助金の活用ガイド
- ホームページのドメイン・データ・著作権は誰のもの?
まとめ
開業前は資金繰りが最大の悩みですが、事業が始まると悩みの1位は「顧客・販路の開拓」に入れ替わります。ホームページは、その入れ替わりに間に合わせる道具です。
目安は開業日の1か月前公開、動き出しは3〜4か月前。間に合わなくても、屋号とドメインだけは先に決めてください。この2つが止まると名刺もメールも動きません。
そして開業前に全部そろえようとしないことです。お客様の声も実績も、営業を始めてからしか作れません。最初は小さく出して、育てていくほうが現実的です。
開業日が決まっていれば、そこから逆算して何がいつまでに要るかをお伝えできます。屋号だけ決まっている段階でも構いません。